【from Editor】講師をして教えられたこと(産経新聞)

 先日、マスコミ志望の大学生を対象にした「ジャーナリスト養成講座」が、東京本社で開かれた。参加者は城西大学の男女8人で、3人は中国からの留学生という異色の顔ぶれ。個性豊かな受講者に「フォトジャーナリズム概論」の講師として、講義や写真取材の実習、作品の講評などを行った。

 撮影実習は、広角レンズで被写体に迫っての撮影や遠くのものを引き寄せる望遠レンズの使い方、また、ボケ味を利用して主題になる被写体を際立たせる手法など、簡単な撮影テクニックを説明。その後、1時間以内で自分で決めたテーマに沿って撮影してくるという形で進めた。

 このとき、20年以上前の入社試験の記憶がよみがえった。同じ方法で写真の腕を試されたのだ。テーマは「働く」で、フィルム2本を渡され、2時間以内に撮影して本社に戻るルール。時間はあっという間に過ぎ、街の中を右往左往しただけで会社に帰った。現像ができるまで、うまく写っているか気が気でなかった。

 今はデジタルカメラやカメラ付き携帯電話が普及、いつでもどこでも、誰もが簡単にきれいな写真が撮れる時代。できばえもすぐに分かり失敗は少ない。しかし、「どんな感じで撮れたかな?」という、仕上がるまでのワクワク感はなくなった。

 講習で学生たちが撮影した作品を見てハッとした。「道端のパチンコ玉」や「地面に描かれた路上禁煙のマーク」「たばこの吸い殻」など、うつむきがちな視線で街を歩いたかのような写真。逆に「青空に浮かぶ飛行機雲」「木の枝に置かれた巣箱」「木の実をついばむ小鳥」などは上を向いていた成果だろうか。

 このほか「逆光の中を泳ぐ白鳥」「地面に写った不思議なシルエット」など、被写体は多岐にわたっていた。若いまなざしは1時間足らずの間に、街中のごくありふれた小さなものを、丹念に細かく、上や下から新鮮な感覚で素直にとらえていた。

 入社間もないころ「ネタは目と足で探せ」と、デスクにハッパをかけられた。しかし、インターネット全盛の現在、パソコンを通しての情報収集に慣れ、それが当然になっていた。「現場の視点を忘れちゃいけないよ」。日々の紙面作りに追われる身に、初々しい学生の目で切り取った写真が語りかけてきた。講師とはいいながら、逆に教えられた気がした。(写真報道局部次長 斎藤良雄)

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